【完】さつきあめ
「まぁ、さくらよろしくな。
まぁ俺がさくらの管理係みたいな感じだから。何かあったら俺に言って」

「え~…」

「あ?!何か不満でも?」

だから…スキンヘッドと鼻ピなんかして見た目だけでもすごい威圧感なんだから、そんな顔ですごまないでほしい。

「いえいえ不満なぁ~んて全然ないですけどぉ~」

「不満ありありじゃねぇか!

つぅかさ…お前みたいにこの仕事に向いてなさそうな奴がこのお店に来たってことはお前はお前なりのなんか考えがあるんだと思うんだけど…
厳しいことあんま言いたくねぇんだけど、強くなりてぇんだったら俺の前でもう絶対泣くな」

さっきまでおちゃらけていた声のトーンが途端に真面目になる。
伏し目がちで遠慮しながら言った厳しい言葉が、優しさなんだってことは何となくわかる。

「泣かない…。
高橋くんの前では絶対に泣かないから!」

「ほんとわかんねー奴だなぁ、なよなよよわっちそうに見えるのに気が強いとこもあったり、さっきまで泣いてたかと思えばいま笑ってたりさ

まぁよろしくな」

差し出された手を取ると、ぐっと強く握り返す。
にこっと笑う高橋。スキンヘッドも鼻ピもいまは全然怖くなくなっていた。

「なに?高橋、さくらのこと泣かせたの?」

…!!


振り向くと、壁に寄りかかりニヤニヤと笑いながらこちらを見つめる。光が立っていた。
光の頬が心なしか少し赤く見えた。
ふわりとした海みたいな香水が鼻を横切って、光はにこにこしながらわたしの頭をくしゃくしゃと撫でる。そんな光は何も思わずにしている行動のひとつひとつに心が揺さぶられていく。

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