何度記憶をなくしても、きみに好きと伝えるよ。




「はー食った食ったー」


お弁当を全て食べ終えた悠が、空に向かって伸びをした。9月になったけれど、校舎の屋上はまだ蒸し暑い。だけど、時折吹くそよ風が涼しくて、秋の匂いを運んでくれていた。

二学期が始まって、1週間余り経った。いつもは詩織や加奈ちゃんと過ごすお昼休みだけれど、今日は詩織は園芸部、加奈ちゃんは文芸部の集まりへと行ってしまった。

10月に開催される文化祭の準備のため、文化系の部員達は、二学期早々から忙しい日々を送っているようだ。

そういうわけで、今日は悠と2人でお昼休みを過ごすことになったのだ。

2人で向かった屋上は、まだ暑いせいか人もまばらで、私の知り合いはもちろんのこと、悠の友達もいなかった。

だから私達は人の目を気にせずにのんびりと過ごせた。


「ごめんね、多かった?」

「いやいや、桜のお弁当、全部美味しかったよ。これならいくらでも食べれそうだわ、マジで」


悠が満腹感あまりにも全面におしだしているので、不安になって尋ねたけれど、彼はいつものように嬉しいことを言ってくれる。

今日は予め昼休みを悠と過ごすことがわかっていたので、私は自分の分と彼の分の2つ、お弁当を用意したのだ。
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