何度記憶をなくしても、きみに好きと伝えるよ。




ガシャーンという耳障りな音が悠の病室中に響いた。私はプリザーブドフラワーを入れていたガラスケースを思わず落としてしまったのだった。

ーー悠が私に放った一言が、あまりにも信じがたくて。

病室には悠のお母さんと奏くんもいた。「大丈夫!? 桜ちゃん怪我してない!?」と、私を気遣う声が聞こえてきたが、それに反応する余裕はなかった。


「ゆ、悠……? 今、なんて……?」


掠れた声で私は問う。ベッドの上で座る悠は、俯いたままで私と目を合わさない。


「ーーだから、もう来ないで欲しいって言ったんだ」


そして、ぼそぼそと冷淡な声で、私にそう言った。今度は空耳じゃなかった。はっきりと聞こえた。ーーもう来ないで欲しいって。


「な、ど、どうして……!? わ、私何かした……?」


昨日までの悠は、私が来ると笑顔で迎えてくれて。楽しく雑談してくれて。帰り際はしんみりしている様子で。

ーーそして「またね」と言ってくれたのに。


「ーー何も。折原さんは何もしてないよ」

「じゃあどうして……!? どうして、急に……」


すると悠は、少し間を置いてから、やはり私と目を合わさずにこう言った。
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