絶対領域
家の前には、朝日を鬱陶しがる幼なじみの姿が。
「あず兄、おはよう」
「はよ。よく眠れたか?」
「まあまあかな」
いつもの朝。
いつもの情景。
せーちゃんとあず兄と一緒に登校するのが、私たちの当たり前。
朝も昼も夜も、必ずせーちゃんかあず兄がそばにいる。
最初こそウザがっていたけれど、もう慣れた。
本当に過保護だよね、2人とも。
3人で並んでたどる、通学路。
夏の残暑はとうに溶け、秋らしく肌寒くなる。
「明日、西校の文化祭だよね?」
今朝の話題は、いよいよ明日に迫った文化祭で持ち切りだ。
遊びに来る気満々のせーちゃんは、ワイシャツの上にパーカーを着て、中学の制服のルールを破ってる。
「姉ちゃんのクラスは童話喫茶で、あずき兄さんと慎士兄さんのクラスはホストクラブだったよね?あー楽しみだなー!」
「世奈、俺のとこは来るなよ」
「絶対行く!」
ねっ?、とせーちゃんが私を見て笑う。
私も、ねー!、と顔を斜めに傾けた。
私とせーちゃんとバンちゃんとゆーちゃんの4人で、あず兄としん兄のクラスに突撃するって約束してるんだから。
今更あず兄が何を言っても無駄だよ。