絶対領域




まだ半開きの眼を細める。


すぐ近くにぼんやりと弟の顔があった。

ひどく歪んだ、辛そうな顔。


なんでそんな顔をするのかわからなくて、下手くそに微笑んでみせた。



「っ、姉ちゃん……!」



ぎゅうぅ、としがみつくように抱きしめられ、戸惑う。


痛いよ。

どうしたの。


どうして、私を抱きしめる腕が、私をすっぽり包みこむ体が、震えてるの?



「せーちゃん?」


「姉ちゃんの、バカ!」


「へ?」



ば、バカ?

急に悪口言われても、お姉ちゃん全然納得できないんですけど。




「どうしてっ!」



悲痛な叫びに、頭痛が共鳴する。


私の首に顔をうずめ、抱きしめる力を強める。




「どうして、こんな無茶すんだよ!」


「無茶?」


「そうだよっ!なんで、俺を、俺らを頼ってくれなかったんだ!」




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