絶対領域



絶叫のした、さっき私とオウサマが通ってきた路地のほうを向いてみる。



あ。

あず兄としん兄だ。



「なに抱き合ってんだよ!離れろ、翠!!」


「なぜ凰ではなく翠がいるんだ……」



通常運転のあず兄は、すぐに私とみーくんを引きはがした。


私の隣を陣取って、みーくんを威嚇している。



唖然としながら突っ立っているしん兄に、オウサマのいない理由を教えれば、納得してくれた。



「そっちは片付いたの?」


「ああ、なんとかな」



しん兄、疲れてるな。

今日いろいろ振り回されたもんね。


たまり場に行ったら、美味しい紅茶でも淹れてあげよう。




「何があったの?」


「神亀の下っ端が、どっかの族の奴らに絡まれたんだよ」


「あっ、俺のところも最近そういうの多いぜ!それに、なんか、空気が悪いというか重いというか……」


「神亀もそうだ。下っ端たちの様子がどうもおかしいんだよな……。結局絡んできた奴らには野次馬に紛れて逃げられちまったし」




神亀も双雷も、どうしちゃったんだろう。

下っ端たちの間で、何か起こってるの?



心臓の裏側で、不吉な影がざわめいていた。




「つーか、こいつら何だよ」



あず兄が指差した先には、倒れているバイクと双雷の下っ端。


……指摘するよね、やっぱり。



「双雷の下っ端だよ。なぜか萌奈を襲おうとして……」


「は!?なんでだよ!なんでお前のとこの奴が萌奈を傷つけるんだよ!!」


「俺にもわからない。最近、下っ端たちの動向が怪しいから、パトロールしてるこいつらのあとを追いかけたらこんなことになってたんだ」



ごめん、と謝罪するみーくんに、あず兄もしん兄も何も言わなかった。


許す許さないというより、知らないところで確実に企んでいる恐怖に打ちひしがれているみたいだ。



違和感が募っていく。


口の中にはまだ、コーヒーの苦味が残っていた。







――深まる謎をほどけたその後に、もうひとつの密会が待っている。





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