絶対領域
もうすぐこの町を抜ける。
もう少し距離を離したいけど……。
『っあああ!まどろっこしい!』
突然、幹部の1人が叫んだ。
な、なんだ?
顔だけ振り向けば、幹部が2人とも立ち止まっていた。
諦めたのか?
『なんだよ、あのナイフ!スピードもなけりゃ、勢いもねぇじゃねぇか!』
『もういい、貸せっ!俺らがやる!』
入れ墨の男から持っているナイフを全て奪い取り、再び走り始める。
ぶわっ、と鳥肌が立った。
やばい。
幹部の奴らが、本気になっちまった。
幹部がナイフを使用するのに、近いも遠いも関係ない。
姿が見えている限り、殺られてしまう。
『萌奈、スピード上げるぞ!』
『え……!?』
半分萌奈の手を引っ張るような形で、より大きく手足を振る。
逃げなければ。
隠れなければ。
でないと、あいつらに……!
『いいか、見とけ。移動中に投げる時はな、こうするんだよ!』
早速ナイフを投げてきた。
ヒュンッ、と音を立てながら俺と萌奈の間を裂き、地面に突き刺さる。
先ほどまでのとは比べものにならない。
威力が違いすぎる。
『った……』
萌奈の走る速度が、遅くなる。
若干、左足を引きずっていた。
『萌奈……?』
『な、なんでもない。……なんともないよ!』
あからさまな法螺【ホラ】に、騙されてやれない。
俺はそんなに優しくない。
なんでもないなんて、嘘だ。大嘘だ。
もしかして、今のナイフにやられたのか?