絶対領域



「みーくんって、呼んだ」


「そ、それって……!」



さっきゆかりんは、私が心細かったんじゃないかって案じてくれたけど。


たぶんね、記憶喪失になって心細くなってたのは、皆のほうだと思う。


でも私の前では明るくいて、気遣ってくれてた。



だから今、寂しさをあふれさせたみたいな顔してるんでしょ?




「うん。記憶、戻ったよ」



ああ、もう。

あず兄、せっかくの美形が台無しだよ?


みっともなくて、ぶっさいくで。


それなのになんでかな。

心がポカポカしてくるの。



これを幸せと呼んでもいいかな?



「ただいま」


「姉ちゃ……」

「萌奈!!」


「わっ!?」



照れくさそうに微笑めば、せーちゃんより先にあず兄が抱き着いてきた。


しん兄はやれやれと呆れてる。

メガネの奥で、暗い青色が潤んでいたのを見逃さなかった。




「モエモエ、おか」


「あずき兄さん!姉ちゃんから離れろ!!」


「お、おかえ」


「引っ付いてんじゃねぇ!!」


「お」


「おいっ!はーなーれーろー!!!」


「うっるさいなぁ!おかえり、って最後まで言わせてよー!」




いろいろと渋滞してるけど大丈夫?


それとゆーちゃん、最後にちゃんと言えてるよ?伝わってるよ?


あとここ病院だからね?やかましすぎると注意されちゃうよ。気をつけて。



「お前たち、声量がでかすぎる。病院から追い出すぞ」


そう、こんな風に。


厳しいしん兄に、皆一斉に姿勢を正してシーンとなる。

さすがです。



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