絶対領域



初めはオリとランちゃんが兄弟だって聞いてもなかなか信じられなかったけど、今ではそうとしか見えない。


お兄さんなオリも、弟くんのランちゃんも見慣れていないはずなのに、なんだかしっくりくる。



あんなにも“家族”だったんだね。




「ふざけんなよ!!」



振るった拳が、オリの顔面にかする。


寸前、オリはくるりと回ってランちゃんの真横に立ち、襟をクイッと後ろに引っ張った。



「くっそ……!」



尻餅をついてしまってもあきらめずに、下半身を浮かせて右足を振り回した。


見事にオリの横腹ごと吹っ飛ばす。



膝をついたオリの上に飛びかかり、馬乗りになった。



「はぁ、はぁ……っ」


「……蘭次郎、」


「っあんたのせいだ!!」



荒々しく胸倉を掴む。


楽しげな雰囲気が沈んでいく。



「あんたがこんなとこにいるから、俺は苦しい嘘をついて、いろんな奴を傷つけて、独りになったんだ!あんたのせいで、俺は……!!」



ずっとずっと、嘲りながら溜め込んできたんだろうな。


誰にも言えずに。

信じられずに。


まだたったの14歳なのに。



心根の捌け口すらなくて。


紅組の残酷で汚いやり方しか知らなくて。



まがい物を演じるしか、わからなかったんだ。



< 585 / 627 >

この作品をシェア

pagetop