絶対領域




「まあ、これまでお前がしてきたことは、今素直になるために必要なことだったのかもな」



不器用なところ。

遠回りしたこと。


全部、無駄じゃない。


正解だけに意味があるわけじゃないんだ。



「素直になったから、幸せも居場所も、お前自身も、本物になったんだ」



またひとつ。

ランちゃんの頬に涙が伝う。


両手が塞がっていて、隠せない。



きつく尖がっていた目つきは、気づけば柔らかくなっていた。



「もう、俺だけじゃない」



手の力が抜けていって、とうとう胸倉から離れた。


オリはゆっくり上半身を起こしながら、ランちゃんを抱き寄せる。




「お前も、自由だ」




必死に張っていた糸がプツリとキレたみたいに、泣き声が反響した。


オリの肩に目元をこすりつけて、白薔薇学園の制服をびしょびしょに濡らす。



夜色の瞳にも、淡い星がチカチカ和いでいた。







純粋な感情をさらけ出して、泣けたのならば。

囚われるのは、今日で、おしまいだ。





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