平凡女子ですが、トリップしたら異世界を救うことになりました
「あの娘はバカなのですか!? 自分を殺そうとした者を助けようとするなんて!」

 イアニスには理解できない。だが、優しい性格であることは間違いなく、凛とした姿を見せながらも周りへの気配りを忘れない桜子をイアニスも好ましく思い始めている。

「そこがサクラのいいところなんだろう。この国の女たちにはそういった心がない。特に皇族は」

 ディオンはひとりの皇族の娘を思い浮かべて、皮肉めいた顔になる。

「わが国の女性たちとお比べになるのは、いささか無理がありましょう。あの娘は奇特です。しかし、我が国の法を曲げようとなさるディオンさまが心配でございます」

 今までになかったことである。

 桜子がディオンの前に現れてから、しだいに変わっていく第三皇子に、イアニスは憂虞する。桜子の存在がディオンを危機に陥れやしないか心配なのである。

 しかし、ここはディオンが統治するアシュアン領だ。ディオンが右と言えば、左も右になるのであった。


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