No border ~雨も月も…君との距離も~
17章 キスの後…キスの痕
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「 シン…………。居るの? 」

モスグリーンのカーテンが ひかれたままの薄暗い部屋の奥を 私は覗き込む。

返事は無くても、人の呼吸を感じる。

ここへ来るまでに 寄った駅前のスーパーのレジ袋を 狭い台所の足元に置く。

「 シン……?」

レジ袋の中で、ガサッ…と荷物が崩れる。

「 ……シン……。」

恐る恐るなのは、久しぶりに彼に会える緊張と…やっぱり シンが 抱えている闇への恐怖…。

ベッドが 真横にあるにも 関わらず、床にニット帽を被ったまま 行き倒れているシンに 駆け寄る。

「 あっ…………ねぇ!! シンっ。
シンってばっ!! 」

思わず、シンの頬に両手をあてる。

ヒヤッとしつつも、温かい。

「 う……ぅ~、痛ってて……体、痛っ。

あ……れ? 紗奈……?? 」

生きて……る。

「 紗奈……どうして? ここに居るの……? 」

「 ……シン、よかった。 死んでるかと思ったじゃん…。」

ホッとして…座り込む私に シンはフッと笑って、こめかみを押さえながら 上半身を起こした。

「 死なねぇ~よ。(笑) 」

シンの癖。

傷ついていても…ケラッと笑う。

「 あっ……でも、人って案外 あっさり死んでまうからな。 突然……(笑) 」

シンの癖。

自分の哀しみや戸惑いを胸に閉まって…なんでもない様に 軽く笑う。

「 …………笑えないよ。」

「 ………………。 (笑) 」

まだ 掠れたままのシンの声は 孤独に震える声にも聞こえた。

シレッと…遠いどこかを見つめる彼の瞳は強がりを纏った 迷い子の様にも見える。



シンは なんでもない様に…笑う。



そして…


おかしいことに、そんな彼を見た時に そのピュアさに愛しさが 込み上げてくる。

苦しんでいる彼は…
私だけの物の様に 思う。

どうして…鋭くも色気のある その瞳は こんなにピュアなんだろう。

私は、シンの側に膝をつくと 彼を 抱きしめる。



小さな 少年を抱きしめる様に…

髪を 撫でたり…ギュッとするけれど、

腕に触れる 彼の肩は めちゃくちゃ 男で。

そのギャップに……今さらながら びっくりする。


それほど シンのヤンチャな鎧は 分厚くて……

奥の方は 真っ白で……



純白以上に、クリスタル。



傍にいないと 壊れてしまう。

傍にいても……

壊してしまう。




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