No border ~雨も月も…君との距離も~
「 タクと…私は No borderだよ。

あの世も この世も No borderでいたいよ。

紗奈。 シンは……生きてるよ。

同じ 生きてる世界にいるよ。こっちの世界にborderなんて無い。

私は……そう思いたいよ。」

「 シンは……生きてる。」

呟く私に 鈴ちゃんは 言葉に力を込める。

「 うん。美音のパパは……ちゃんと生きてる。
そうでしょ。」

私は、はっとして顔を上げて美音を探す。

シンと私が 一緒にいて……幸せだった証は 美音だけなんだと…怖くなる。

シンの……声。

美しい音……と書いて 美音。

「 ……う…わぁっ!!」

少し 離れた場所、墓石が並ぶ道の先で 美音の短い悲鳴と 同時に その姿が消える。

「 あっ!! 美音っ!! 」

段差のある 道の先。

「 落ちたっ!! 」

私と 鈴ちゃんは 慌てて走り出す。

「 美音っ!!」

とにかく 全力で走ったその段差の先で……

美音は 男性に 抱き抱えられて 半泣きになっていた。

きっと 足を滑らせて 驚いた涙。

男性の足元には 大きな花束が落ちていて、

私と鈴ちゃんは 同時に 息を飲む。

ハイセンスなレザージャケット。

若い子たちが こぞってマネをする、流行りの髪型。

サングラスで顔を隠しているつもりかもしれないけれど…その役目は全く果たされず、彼のオーラは この墓地と青空にやたらと 浮いていて… 際立って目立っていた。

4年ぶり。

「 …………翔平…君っ?! 」

「 紗奈…ちゃん? ……鈴ちゃんも?? 」

翔平君は そっと美音を腕から降ろす。

「 ママっ!! 」

「 美音……大丈夫? 」

私は しゃがんで美音を抱き締めると、顔や体にキズが無いか確かめる。

「 よかった……。」

サングラスを外した翔平君は、驚きのあまり 声が出ないという表情で私と鈴ちゃんを交互に見つめた。

「 久しぶり……翔平君。」

私は……立ち上がって頭を下げる。

「 それから……息子を助けてくれて、ありがとう。」

翔平君は 驚いた表情のまま落としてしまった、花束を丁寧に拾って やっと微笑みを返してきた。
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