No border ~雨も月も…君との距離も~
チッ……

「 ……面倒くせーーなっ。」

舌打ちと一緒に、鈴ちゃんの手をほどくと…シンは やや乱暴に身体で入口の扉を押した。

「 タク……どうしよ。」

「 …………大丈夫……だよ。」

と言う、タクの不安そうな顔を残して……シンと翔平は 縺れながら外へ出た。

春の気まぐれに冷たい風で 少し呼吸を整えると、シンはBIG4の前に並ぶ街路樹に腰を降ろした。

「 で。何?」

突っ立ったまんまの 翔平を見上げる。

前髪を しきりにかき揚げる 翔平の全身から、イラ立ちが 伝わってくる。

「 お前……いつから?」

「 …………何…?!」

「 いつからって…聞いてるっ!」

「 ………もしかしてだけど、紗奈のこと?」

翔平が意外なところから 口を開いた事に 少し驚く。

「 んな事、お前に関係ねぇだろ……。」

「 俺たち……デビューすんじゃねーのかよ。
メジャーだろ?俺たち。」

「 何、言ってんだよ……。紗奈とそれは、別だろっ……?」

翔平は、あまりにも軽く答える シンの胸ぐらを 掴んで 持ち上げるようにして、シンを 立ち上がらせた。

「 いっつもっ!そうやって……お前の 後先を考えねぇところが、気に喰わねぇんだよっ!
自分の立場とか……少しは考えろやっ!」

「 翔平に 言われなくても…インスタでのことは、悪かったと思ってる。
その他にも 気をつけるようにするし……
メジャーのことは、俺なりに真剣だし 考えてるよっ!」

「 アホかっ! お前。
そんなん わかってるよ……。
本気なのは、メンバー全員同じだよ。
わかってるよっ! わかってるけど………。」

「 ………じゃぁ……。」

「 ……紗奈ちゃん、傷つけるなよ。」

「 ………………。」

「 もうすぐ……東京行って、デビューして。
紗奈ちゃんのこと、どうする気だよ。」

「 ………翔平…?」

「 わざわざ、傷つけるような事 すんなよ。」

翔平の声が 細くなる。

「 なぁ………翔平。 まさか、紗奈のこと…?」

背を向ける翔平に、それが正解だと確信する。

「 お前、自分のことばっかじゃん。もっと相手の事とか、自分の状況 考えてから付き合えよ…。
一緒にいてやれないかもしれないのに………
俺たち、どうなるかも わからないのに………。」

「 それは、わかってる。」

「 わかってたら、何ですんだよっ!
俺は………調子に乗って、後先を考えねぇ~お前のそういうところが気に喰わねぇんだよっ!」

「 ………なん…だよ。それ。」

そして、次の 翔平らしくないセリフに 2度 驚く。

「 ちょっと 自分の書いた詞で 曲が、売れ出したからって…。」

刃は………嫉妬。

翔平に限って それは無い。

シンの中で、少し混乱する。

「 …………。俺は そんな風に思ったことないよ。
翔平…らしくないよ。」

翔平が シンに向かって、詰め寄ろうとしたところで 夏香の声が2人を止めた。

「 2人共、何やってんのよ。
さっきから聞いてたら………くだらない。」

夏香は、思わずシンの胸に拳をあてる。




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