No border ~雨も月も…君との距離も~
10章 後遺症
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♪~ 君と 出会った全部を ここに。

君と 一緒の時間は 全部 ここ。

涙は 二人の引き出しに閉まって……

荷物は 少しの方が 落とさないで 歩けるね。


~ pure white you ~

シンは、引っ越し準備の手を止めて……また、ギターを抱えて 唄う。 てか、サボる。

段ボールにガムテープを貼りながら 私は 口を尖らせつつも、クスクス笑う。

優しく……透明な ファルセット。

女性のキーを さらっとコードにのせて 響く、シンの高音に 鳥肌が立つ。

美しい 音。

たまに…ふと 人の声ではない…この世のものではない 美しい音の波動が、胸を震わせる。

シンは、やっぱり 神様から特別な声を貰って 生まれてきた。

そう…思う。

また、サボってるぅーーー! …と言い欠けて、
つい……その美しい音と、美しい横顔に 私は言葉を失う。

黙って 泣きたくなる。

支配 されたくなる。

歌っている時のシンは、やっぱり不思議な程……神々しい。

私だけに 歌ってくれている ピュアなバラードは、いつだって 真っ直ぐ。

汚れのないこの歌は、彼の本当を知っている。

私は、今 目の前の シンだけを信じようと思う。

過去なんて……どうだっていい。

2人の部屋のロフト。

大きな窓は 6月だというのに 強い陽射しが すでに迷い込んでいる。

荷造りをしていると 素肌にまと割りついてくるのは、夏の気配。

シャツを脱いで 腰に巻き付けるけど、汗はまだ 首筋を伝ってくる。

「 俺さぁ…やっぱ芸能人になったら、目…二重とかに なんのかなぁ~ 」

「 ぷっ(笑) 何、ソレ。」

「 ホラ。 整形前とか後とかって、よく あるじゃん。 」

段ボールに衣類を詰め込んで ギュッと押さえて フタをするシンは、“ よしっ ” と満足気に手を払う。

「それ以上、どこを変えるの? シンが言うと嫌味だよぉ(笑) 」

「 あっ。そうだ、このホクロ 取ろっかな~。」

シンは、すぐ側の鏡を見ながら 目尻のホクロを除き込む。


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