エリート御曹司は獣でした

時刻は十四時を過ぎたところで、静かなデスクワークの時間が続いていた。

広い事業部のフロアはドアがふたつあり、第一から第四までの課の机が、仕切りなく並んでいる。

第一課は西側のドア近くで、三十八個の机がふたつの島に分かれ、向かい合わせにされている。

私は南向きの窓に近い自分の席にて、ノートパソコンに向かっていたが、集中を一度切って凝った首を回した。


久瀬さんに指示された仕事はやり終え、明日訪問予定の顧客には、事前に資料をメールで送信した。

別の顧客のプランニング案をふたつ作成し、取引先製紙会社の担当者に電話連絡もした。

十五時からのチーム会議までには、まだ一時間ほどの余裕があるので、それまでなにをしようか……。


こう見えても仕事は人並みにできると自負しており、半年ほど前から重要案件も任されるようになった。

手が空いたので、先輩方に手伝えることはないか、聞いて回ろうと考えていたら、外出していた久瀬さんが帰ってきた。


コート姿の彼が、第一課と第二課の間の通路を歩けば、女性社員の視線がチラチラと注がれる。

彼の髪や肩は少々濡れており、外はまだ雨が降り続いているのだと、私は天気を意識した。


帰りまでに、やんでくれないかな。

値引きシールを貼った肉を買いに、今日もスーパーマーケットに寄りたいんだよね……。
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