エリート御曹司は獣でした

そう言っても、香織はまだ疑いの目を向けていて、八重子ちゃんは、「久瀬さんと付き合ってるんですか？」とごく普通の口調で、あり得ない質問をぶつけてくる。

綾乃さんは菩薩のような微笑みを浮かべたまま、「私も気になってたのよ。白状した方がいいわよ」と詰め寄ってきた。

肉シュウマイを楽しんでいられなくなった私は箸を置いて、「違うんだって！」と必死の弁解を始める。


「あのね、望月フーズから依頼された件でーー」


久瀬さんの変身体質については秘密にする契約を交わしているので、教えられない。

それで納得してもらうために、仕事上で私が犯したミスと、彼がどのようにフォローしてくれたのかを事細かに説明した。

羨ましがられると思ったから、親友の香織にも高級寿司店での接待と、その後に自宅まで送ってもらったことは話していなかったのだが、致し方なく打ち明ける。


「だからね、私の面倒をしっかりみなければという気持ちにさせてしまっただけなんだよ。ほら、八重子ちゃんと違って私は、今まで大きなミスはしてこなかったのに、今回やっちゃったから、まだまだ目を離せないと思ったんじゃないかな」