不機嫌ですが、クールな部長に溺愛されています
今日は午前十時から、新任された得意先の専務が挨拶に来る予定なので、それまで事務仕事を行っていた。

約束の時間になると専務を社長室まで案内して、お茶をお出しする。わが社の商品をアピールするためにも、チョコレートを一緒に。

このミルクチョコレートには緑茶の相性が抜群だ。ホワイトチョコレートにもナッツ系にも、それぞれに合うお茶があり、来客者から『美味しかったよ』とひとこともらえたときは、秘書冥利に尽きるものだ。

今日お見えになった専務は五十代くらいの中肉中背の男性で、とても愛想はいいけれど、面長のお顔がちょっと馬に似ていらっしゃる……というのが第一印象。

彼にも喜んでいただけることを願いながら、適温の湯で丁寧に抽出したお茶とチョコレートをお盆に乗せ、再び社長室に戻った。


「失礼いたします」


専務の右側からお茶をお出しすると、彼は「あぁ、どうも」と会釈して私を見上げる。そのまま、なぜかずっと視線を送り続けてくる。

内心気にしつつも、お盆を左脇に抱えて退出しようとしたとき、専務は惚けたような様子でこんなことを言い出した。
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