不機嫌ですが、クールな部長に溺愛されています
普段から物を散らかしていなくてよかった、と思いながら耀をベッドに座らせる。さっさと布団をかけようとすると、彼は今さら遠慮がちに言う。


「僕、床でいいのに」

「いい布団ないから疲れ取れないわよ。はい、おやすみ」

「お母さんみたい……」

「うるさい」


若干イラッとしつつ強引に布団を被せ、ほんの数十秒待っただけで寝息が聞こえてきた。

本当に相当疲れていたんだろう。デザイン関係の仕事は大変だとよく聞くけれど、耀のこの様子を見ているとその通りなのだろうと思う。

静かに顔を覗いてみれば、若干目の周りにクマができているものの、長いまつ毛を伏せた美しい寝顔がある。眠り姫ならぬ眠り王子だな、なんて茶化してみながら、小さなため息をついた。

社長が聞いた話によれば、Akaruに振り回されているんだっけ。連日、こんなに遅くまで一緒に仕事しているのね。

Akaruの容姿はまったくわからないのに、耀と綺麗な女性がふたりでオフィスに残っているシーンを勝手に想像して、胸がざわめく。
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