未然見合い





素直にその手に甘え身体を起こしたあたしは、自らの手に持っていたハガキを再度認めると。



「翔太」

「? なんだよ」








「これ」


これ見よがしに奴の眼前へと自らの手中にある其れを押し付け、ぽつりと言葉を吐き出した。





そんなあたしを眉根の寄った双眸で一瞥した翔太だったけれど、鼻先に突きつけられたハガキの内容を読み取ると直ぐに納得したように点頭をおとす。


「往復じゃん。返事いつまで?」

「えっとー……、今月末みたい」

「ふうん」






考えの読み取りにくい表情で声音を洩らした男を見上げるあたし。

と、そんな此方を見下ろしニヒルとも取れる笑みで口許を装飾したオトコ―――基、旦那はと言うと。









「好美は行きたい?」

「どっちかと言えば行きたくない」

「だよな」






煮え切らない応酬ばかりを繰り返す翔太相手に舌打ちをこぼしたくなる。

どうせあたしが行きたくないって言ったって、こいつが行くと決断すれば最終的に付いて行かざるを得なくなる。

それを知っていてあたしに問いを向けてくるなんて、







「でも、俺は行きたいんだよな」









中々どうして性格の悪い男である。










< 119 / 142 >

この作品をシェア

pagetop