未然見合い



へなへな、と。

その場に座りこめば、強気な意志とは裏腹に涙腺が緩みきっていて。




「なんであんなヤツ、まだ好きなんだろう……」


あたしが結婚出来ない主な理由は、これだ。




どんな男と付き合っても、キスをしても、抱かれても。



"何か違う"

"しっくりこない"

"物足りない"




そんな最低な感情に駆られて、結局別れを切り出してしまう。

明瞭に"誰が"とは考えなくても、知らずの内に心が他の男じゃ駄目だと告げていたんだ。





「…、…最悪」


思わず両手で顔を覆い、溜め息混じりに本音を吐き出す。




なんでこんな感情に囚われなきゃいけないのよ。

あたしばっかり、馬鹿みたい。


これからの毎日、否が応でも翔太を想ってしまうんだろう。





嗚呼、もう。

ますます"お見合い"なんて無意味じゃないか。



「っ、男に生まれれば良かった……」




涙混じりに零した言葉は、翔太の"現場"を目にしてから幾度となく嘆願した叫び。


< 19 / 142 >

この作品をシェア

pagetop