未然見合い





「わ、かったから…!わかったから離して!」

「じゃ早く言えよー」

「ねえ!耳元で話し掛けないでお願いだから、」

「ふーん」






漸く、やっとの思いで顔を少し離してくれた翔太を前に安堵の息を吐き出す。

だけれどそんな瞬間も束の間で、



「――そういう反応されっと、逆に煽られんだよな」



加虐的に切れ長の瞳を細めた翔太を前に、あたしの為す術など皆無だった。
















―――――――――――…






「(寝られない……)」


後ろから抱き竦められるようにして横になっているため、身動きすらまともに取れなくて。





尚も激しく鼓動する心臓に戸惑うばかりで、どうしたら良いか分からない。

だって、こんなに緊張したり胸が高鳴ったりするのは初めてで。




経験はもしかすると人並み以上かもしれないけれど、翔太と居るときだけは純真無垢の高校生に戻ったような心地さえしてしまう。









「(――…今日、手、出されなかったな)」



このときの翔太の心境を知るのは、もう少し先のこと。










 he aroused her
(情を催したのは、あたしだけだった?)




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