恋の神様に受験合格祈願をしたら?
新学期2日目の朝。
朝7時半。
『おはよう大作戦』への緊張とやる気の板挟みで睡眠時間は削られ、気持ちの浮き沈みが激しくなるのを感じながら、俺は人通りがまばらな校門前で吐き気と戦っていた。
「こんなに追い込まれた大志を見るの、初めてだな」
見るに見かねたのだろう。リューイチが俺の背中をさすってくれる。
「俺の知るかぎり、人類最強のメンタルの持ち主は大志くんだと思ってたんだけど、違ったみたいだね」
マモルが知らない人間を見るような目をした。
「恋は人を臆病にさせるって言うしな」
知ったかぶりのケイに、
「ケイは猪突猛進で、告白しては振られてますよね。一緒にするのはどうかと」
ヒロが態とらしくククッと笑った。
「これくらい大人しいと、害が少なくて丁度いいんじゃない?」
仁美ちゃんが、サラッと冷たいことを言う。
「菅野、午後からは1年の歓迎会もあるんだし、生徒会主催なんだから、調子悪いなら今のうちに保健室で休んでこいよ」
内情を知らない風紀委員長の岡元昌晃と、副委員長の今野美知子が心配して近づいてきた。
「先輩、気にしなくても大丈夫ですよ。ただの食べすぎによる消化不良ですから」
ヒロの嘘八百に、「ならいいけど。くれぐれも無理すんなよ」と二人が離れた場所へと移動していった。
生徒会メンバーと風紀委員で登校した生徒を挟み、挨拶するためだ。
昨日は数人いた教師が、今日は1人もいない。
「最初は彼女に会いたいばかりの勢いで行動してたのが、振られるかもしれないとか、嫌われるかもしれないとか、進展しないかもしれないとか、色々考えるすぎるようになった結果だろうな。まあ、なるようにしかならないんだから、最初のころみたいに前向きに行けよ」
リューイチが、他人事みたいに俺の肩を叩いた。
リューイチはいいさ。仁美ちゃんと小学生のころからの両片思いをこじらせてるだけで、互いのどちらかが告白した途端結ばれるのは目に見えている。知らないのは当事者2人だけだ。
俺はというと、これからどう転ぶかわからない片思い中だ。
ニコちゃんに彼氏がいないというのは、俺の勝手な推測だ。
ニコちゃんに彼氏がいないと仮定して、ニコちゃんの好みのタイプがわからない以上、ニコちゃんと仲良くなるところから始めるしかない。
出会いは悪くなかったはずだ。
だから、このまま一気にいい人アピールをして。
勉強ができてスポーツができるところを見せて。
そして……。
「ほらほら、集団で登校してきたぞ。いつどこに日向にこがいるかわからないんだ。油断禁物、気ぃ張ってけよ」
リューイチに耳打ちされて、俺は「わかってる」と深呼吸した。
ニコちゃんは見た目も中身も俺の胸を締めつけるほど可愛くて、ただ欲しいと思った。
身を挺してでも守ってあげたいと思った。
そんな女の子は初めてなんだ。
「安心して。骨は拾ってあげるから」
仁美ちゃんが、ツンとしたまま俺の横に移動してきた。
「僕は拾いませんけどね」
ヒロが片手で欠伸を隠した。
「誰が落とすか!」
俺は強気発言をして笑ってみせた。
けど、胃はキリキリと痛みだし……。
下腹部をさする俺に、ヒロが溜め息をついた。
朝7時半。
『おはよう大作戦』への緊張とやる気の板挟みで睡眠時間は削られ、気持ちの浮き沈みが激しくなるのを感じながら、俺は人通りがまばらな校門前で吐き気と戦っていた。
「こんなに追い込まれた大志を見るの、初めてだな」
見るに見かねたのだろう。リューイチが俺の背中をさすってくれる。
「俺の知るかぎり、人類最強のメンタルの持ち主は大志くんだと思ってたんだけど、違ったみたいだね」
マモルが知らない人間を見るような目をした。
「恋は人を臆病にさせるって言うしな」
知ったかぶりのケイに、
「ケイは猪突猛進で、告白しては振られてますよね。一緒にするのはどうかと」
ヒロが態とらしくククッと笑った。
「これくらい大人しいと、害が少なくて丁度いいんじゃない?」
仁美ちゃんが、サラッと冷たいことを言う。
「菅野、午後からは1年の歓迎会もあるんだし、生徒会主催なんだから、調子悪いなら今のうちに保健室で休んでこいよ」
内情を知らない風紀委員長の岡元昌晃と、副委員長の今野美知子が心配して近づいてきた。
「先輩、気にしなくても大丈夫ですよ。ただの食べすぎによる消化不良ですから」
ヒロの嘘八百に、「ならいいけど。くれぐれも無理すんなよ」と二人が離れた場所へと移動していった。
生徒会メンバーと風紀委員で登校した生徒を挟み、挨拶するためだ。
昨日は数人いた教師が、今日は1人もいない。
「最初は彼女に会いたいばかりの勢いで行動してたのが、振られるかもしれないとか、嫌われるかもしれないとか、進展しないかもしれないとか、色々考えるすぎるようになった結果だろうな。まあ、なるようにしかならないんだから、最初のころみたいに前向きに行けよ」
リューイチが、他人事みたいに俺の肩を叩いた。
リューイチはいいさ。仁美ちゃんと小学生のころからの両片思いをこじらせてるだけで、互いのどちらかが告白した途端結ばれるのは目に見えている。知らないのは当事者2人だけだ。
俺はというと、これからどう転ぶかわからない片思い中だ。
ニコちゃんに彼氏がいないというのは、俺の勝手な推測だ。
ニコちゃんに彼氏がいないと仮定して、ニコちゃんの好みのタイプがわからない以上、ニコちゃんと仲良くなるところから始めるしかない。
出会いは悪くなかったはずだ。
だから、このまま一気にいい人アピールをして。
勉強ができてスポーツができるところを見せて。
そして……。
「ほらほら、集団で登校してきたぞ。いつどこに日向にこがいるかわからないんだ。油断禁物、気ぃ張ってけよ」
リューイチに耳打ちされて、俺は「わかってる」と深呼吸した。
ニコちゃんは見た目も中身も俺の胸を締めつけるほど可愛くて、ただ欲しいと思った。
身を挺してでも守ってあげたいと思った。
そんな女の子は初めてなんだ。
「安心して。骨は拾ってあげるから」
仁美ちゃんが、ツンとしたまま俺の横に移動してきた。
「僕は拾いませんけどね」
ヒロが片手で欠伸を隠した。
「誰が落とすか!」
俺は強気発言をして笑ってみせた。
けど、胃はキリキリと痛みだし……。
下腹部をさする俺に、ヒロが溜め息をついた。