恋の神様に受験合格祈願をしたら?
「本当に全然何にもわかってないんだから! そりゃあ、日向さんはいい子だから、生徒会に入ったら嬉しいわ。けど、私は日向さんの気持ち尊重派だから」
 仁美ちゃんは怒りのままドンドンと足を踏み鳴らし、マイクチェックなどの作業をするマモルたちの元へと去っていった。
 俺らを見捨てたってヤツだ。
「で、どうする大志」
 リューイチが声を潜めた。
 俺はリューイチの前にしゃがんだ。
 そして、深々と溜め息をついた。
 仁美ちゃんの心配はもっともだ。
 女の嫉妬はねちっこくて、面倒で、ドロドロしている。
 仁美ちゃんには喋るだけの上っ面な女友達はいても、親友はいない。
 仁美ちゃん、俺たちとつるんでいるから、顔と体でイケメン数人手玉にとってるとか、陰で言われてんだよな。
 今は下火になってるけど、仁美ちゃんはそのせいで、同性から色々イジメを受けてきたからな。
「護るさ」
 俺は言い切った。
 欲しいんだよ。
 どうしてもニコちゃんが欲しい。
 それを邪魔するものがあるなら、蹴散らしてニコちゃんを護るしかない。
 そして、嫉妬するヤツらをグウの音もだせない状態にする。
 問題は……。
「片思いのままじゃ、問題は宙ぶらりんのままだ。何も解決しないだろうな。まあ、なんだ。早く恋人にしろよ」
 リューイチが「ヨイショ」と立ち上がった。
「ケーブル確認しろよ! コンセントは刺さってるか? ライトは?」
 歓迎会を取り仕切るリーダーとして、リューイチがまわりに指示をだしていく。
 堂々としたリューイチに、みんなの視線が集まり、士気が高まっていく。
 俺にもリューイチみたいな才能があれば、少しは強くなれるのかな?
 ニコちゃんを護れるのかな?
 俺が見ていない今、ニコちゃんは元気にしているかな?
「会いたいな」
 本音を漏らすと、俺は「ドッコイショッ」と立ちあがった。
 ニコちゃんに会えたら、俺は途端に元気になれる。
 それを、朝の校門で知ったから……。
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