恋の神様に受験合格祈願をしたら?
「今まで、イジメは見て見ぬふりされるもんだと思ってたけど、なんか安心しちゃった」
 放送があった日の放課後。
 生徒会室で、憑き物が落ちたような笑顔をハルちゃんが浮かべた。
 けど、それはハルちゃんだけじゃなかった。
 リカちゃんも、生徒会メンバー全員もそうだった。
「使える権力は使うし、放送によってイジメを小さい芽の段階で抑えられるって説明したら、校長も折れてくれたよ」
 会長が、みんなにインスタントコーヒーやココア、紅茶を入れてくれた。
 小さなローテーブルに、菅野さんたちがそれぞれのイスを引いてきて集まる。
 私とリカちゃんとハルちゃんと仁美先輩は、保健室にあるのと同じ長椅子に座った。
 みんなが各自で持ち込み、生徒会に保管しているマイカップは、大きさも模様もバラバラだ。
 すべての飲み物を作り終えるまで、会長は電気ケトルで3回お湯を沸かした。
「私、ようやくだけど、生徒会に入ってよかったと思ったわ」
 疲れた体に染み渡らせるように、仁美先輩が砂糖たっぷりの紅茶にゆっくりと口をつけた。
 その穏やかな表情は、とても印象的だった。
「完全にイジメをなくすのは難しいですけど、一歩前進出来た気はしますね」
 ミルクと砂糖増量のコーヒーを啜り、珍しくヒロさんが微笑んだ。
「このメンバーだからできたことだけどね」
 マモルさんが、ヒロさんの肩を労うように軽く叩いた。
「もしかして、先輩たちもイジメを経験されたんですか?」
 ハルちゃんが探るように尋ねると、
「コイツとコイツがな」
 会長が、菅野さんと仁美先輩を交互に指さした。
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