恋の神様に受験合格祈願をしたら?
 半数以上が教室を飛びだしていった。
 残った連中は、スマホを取りだしてどこかへ連絡するヤツ、「マジかよ」と疲れた表情で机に倒れ込むヤツ、顔色を変えて怯えるヤツ、カメラを確認するヤツ、ムシャクシャした態度で遅れて出ていくヤツ、様々だ。
 そんなヤツらの小物っぷりな態度を見ていたら、怒りがスーッを消えた。
 代わりに、盛大な疲れが襲ってきた。
 俺はグッタリしながら、テーブルに両肘をついた。
 俯いて、ヤッてしまった感に激しくさいなまれる。
 ああ、これで今まで作り上げてきた生徒会の温和なイメージを完全に壊した。
 それだけじゃない。
 ニコちゃんには優しいとこだけを見せたかったのに、ブチ切れた挙句にカッコ悪いとこ見せちゃったよ。
 スポーツテストの一件では、無理やり本性を抑え、どうにか誤魔化したのに……。
 これで、ニコちゃんの俺に対する好感度は地に落ちたな。
 怖がられてるよな。
 俺、完璧嫌われたかも。
 初めて人を本気に好きなった。
 そして、欲がでた。
 大好きな人に俺のことを好きになってほしくて、努力して、結果これって……なんだよ!
 俺が人を好きになっちゃダメなのか?
 好かれたい努力をしちゃダメなのか?
 なんかもう、疲れた。
 疲れたけど、やっぱりニコちゃんが大好きだ。
 好きで好きで、たまらなく好きで、何があっても諦められない。
「あのっ」
 ニコちゃんの切羽待った声に、俺はノロノロと顔をあげた。
「ごめんねニコちゃん、予算会中に怒鳴ってさ。怖かったでしょ」
 俺はどんな顔をしてニコちゃんを見ればいいのかわからなくて、視線を逸らした。
「いえ、ビックリしましたけど、菅野さん、とってもカッコよかったです」
 思いもしなかったニコちゃんの言葉に、俺は固まると、信じられなくて「えっ?」と視線をあげた。
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