恋の神様に受験合格祈願をしたら?

【side:日向にこ】

 私は毛布に包まったまま、保健室の長椅子に座っていた。
 前には、私のためだけに稼働するオイルヒーター。
 濡れた制服の代わりに私を包むのは、今日使用したという菅野さんの体操服。
 菅野さんの私物ってだけでも心臓に悪いのに、着用後って事実にトキメキが倍増。
 さらには、濡れたブラジャーを脱いでいるから、体操服が直接胸にあたって、いけないことをしている気持ちになってしまう。
 菅野さんには、濡れた上履きの代わりに客用スリッパを用意してもらい、鞄まで持ってきてもらい、至れり尽くせりで申し訳なくなってしまう。
 ドライヤーのあたたかな風とともに、菅原さんの指が私の髪を優しくすいてくれる。
 大好きな人の優しさと愛おしさ、大切にしてもらえる嬉しさ、触れられる恥ずかしさとくすぐったさで、心臓がドキドキしすぎて今にも胸を突き破って飛びだしそうで怖い。
 体に悪すぎるほどの幸せを、私は恐縮しながらも噛みしめた。
 チラリと振り返ると、後ろに立って私の髪を乾かす菅野さんが「熱かった?」とすまなそうに微笑んだ。
 私はブンブン首を横に振ると、「違います。快適です!」と力いっぱい答えた。
 途端、保健の南波先生が『ブフッ』と噴きだした。
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