恋の神様に受験合格祈願をしたら?
「私の分も飲みますか?」
 ニコちゃんが差し出した紙コップには、ゆず茶が四分の一ほど残っていた。
 今の俺、そんなに喉が渇いてるように見えたかな。
 まあ、渇いてるんだけど。
「俺のことはいいから、美味しかったなら、全部飲んじゃいなよ」
 俺の言葉にニコちゃんが頷いた。自分のペースで飲めばいいのに、俺に合わせてか、残りをゆっくりと飲み干した。
「ご馳走様でした」
 紙コップから離れたニコちゃんの唇は濡れていて、果実のように美味しそうだ。
「コップは回収するよ」
 俺は自分の持っていた紙コップをニコちゃんが持つ紙コップに入れると、合わさった二つを手に取って立ち上がり、ゴミ箱に捨てた。
 そして、再び椅子に戻ると、ニコちゃんが畏まったように固まっていた。
 俺はニコちゃんがいるだけで嬉しいし楽しいけど、ニコちゃんはどうなんだろう。
「あの、いつも色々先にしていただいて、ありがとうございます」
 ニコちゃんが照れたように笑った。
「ニコちゃんは特別。してあげたくなるんだ」
 ニコちゃんの照れが伝染して、なんだか俺は恥ずかしくなった。
 頬が熱い。
「そんなことを私に言ってくれるの、菅野さんとおばあちゃんしかいません」
 ニコちゃんが楽しそうに笑った。
「俺、おばあちゃんと一緒なんだ」
 告白するタイミングを窺っていた俺は、あまりの言葉に脱力した。
 俺の存在って、おばあちゃんと同等かよ。
 これは、告白しても100パーセント玉砕だな。
 まあいいさ。
 玉砕上等。
 振られても振られても、何度だって立ち上がって告白する。
 ニコちゃんを自分のものにしないといられない。
 ニコちゃんが俺のものになれば、もっと正々堂々と護れるし、抱きしめられるし、安心できる。
 ニコちゃんが欲しくてどうしようもないんだ。
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