恋の神様に受験合格祈願をしたら?
2 章 約束を果たしましょう

【side:菅野大志】

 高校受験、合格発表当日。
 俺たち生徒会メンバーは、合格者説明会の準備のため、本来なら休みの学校に朝から登校していた。
 俺が登校したのは、午前8時すぎ。
 生徒会メンバーでは一番乗り。
 教頭たちから「早すぎだろ」と注意されつつ、指示されるまま職員室の応接セットのソファに座った。
 そして、受験者やその家族よりも早く、名簿で合格発表を確認。
 受験の日。俺はにこちゃんに受験のための持ち物を確認するよう促した。
 にこちゃんは俺の言葉を疑いもせず、受験票やペンケースを鞄から取りだした。
 俺はにこちゃんの受験票を暗記した。
 日向にこ。
 受験番号は194。
 語呂合わせで『行くよ』と覚えた。
 本人には暗記したことを気づかれないよう、最後まで名前は知らないふりで通した。
 保健教諭の南波先生は、そんな俺たちを見てクスクス笑いをこらえていた。あの笑い方は、俺の思惑に気づいてたんだと思う。
 日向にこ。
 いい名前だ。
 泣き顔や困った顔があんなに可愛いなら、ニコニコと笑った顔なんて、もっともっと可愛いだろう。
 ニコニコのニコちゃん。今日から俺は、彼女を『ニコちゃん』と呼ぼう。
 俺は勝手にそう決めて、ニコちゃんを条件会場となる教室まで送った。
 別れてからもずっと、ニコちゃんのことが忘れられなかった。
 今さらだけど、小さい肩を思い切り抱きしめればよかったと未練タラタラな俺は、ニコちゃんへの恋を自覚した。
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