クールなアイドルの熱烈アプローチ
一週間後に関係者全員で会うことになったがその間、陽菜は変装した姿もスクープされてしまったことから絶対に出歩かないように勇人と堀原、朝陽に言われていた。

だが、ただ大人しくしているだけでなく、陽菜は陽菜なりに動こうとせっせとある物を作っていた。
それは気に入っていた一番始めに無くなった手帳と似たようなデザインの新しい手帳で、たった今ようやく完成した。

「ごめんね、囮になってね……」

真新しい出来たばかりの手帳をそっと撫で、陽菜は複雑な心境でその手帳をいつも持ち歩く鞄の中に入れた。

『越名さん!越名さん、一言お願いします!!』

テレビからの声に陽菜はビクッと肩を揺らし急いで振り返った。
自分のスキャンダルの時と違って、勇人とスクープされてから陽菜は極力テレビで情報を集めることにしたが、いざ見てみるとやはり緊張でドキドキしてしまう。

今やっているのは生放送のようで、勇人が移動してきた車からテレビ局に入るまでの短い距離でマスコミに囲まれたようだった。

『一般人の方とお付き合いされてるようですが、順調ですか!?』

『突然の事に驚いているファンの方もいらっしゃると思います、何か一言!』

質問に答えずにクールな面持ちで颯爽と歩く姿がとても格好良く、最初とは違った意味でドキドキしていた。
局の前に行きつくと勇人は突然カメラの方に振り返り、人差し指を立てて自分の口に当てていた。

『まだ告白してないけど、本気だから邪魔しないで』

それだけ言って局に入っていってしまう勇人にその場のマスコミも番組の司会者も、真っ赤になって思わずその場にしゃがみこんでしまった陽菜も、暫く何も話せなかった。
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