ずっと・・・
7th*堪えきれず



「……ねぇ、もう手放しても大丈夫だと思うけど」


彼女は、何も反応しなかった。

たぶん、気づいてないとかじゃない。

だけど、何か言えるほど彼女の状態は正常ではなかったんだ。

そうじゃなければ、帰るぞと言ってどさくさに紛れて繋いだ手を見て何か反応を示していいはずだ。


「いいんじゃね?誰かに文句を言われる筋合いもねぇし」

「イヤ、私が文句言いたい……」

「有紗が言える訳ねぇじゃん。オレが放す訳もないだろ」


会社から離れたとたん、口調が変わる。

よく、あの子の前で素が出なかったな。


「ところで、どこ行くの?帰らないの?」


彼の状態を見て、諦めて話題を変える。

ずっと歩いているけど、明らかに家には向かっていない。


「言ったじゃん、会合があるって」

「は?会合って……」


さっきのメールの話しか。

でも、実際会合ではなく、普通の飲みの誘いだった。

本当にどこへ行くのだろう。

それより、今日はまだ月曜なんだけど。

早く帰りたいのに。




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