ひとりだと思っていた君へ
10

自分というものは、幾つもいるのだろうか。
心臓がとか、そういうことじゃなくて、みんなそれぞれが自分を勘違いして生きているようにも感じた。
文化祭のときの自分と今の自分はどう違うんだろう。
自信か。ハローくんに拒絶されたように感じて、今は話すことさえ躊躇っている。
それはやっぱり、自信がないからだ。
確かに自信のない人の話なんて、何も伝わらない気がする。

校門を出ると白い学ランが目に入りどきりとした。

「柚月さん?」

一瞬誰だかわからなかったけど、すぐにハローくんの後輩のミッチーだと気づいた。

「あ、ミッチーくんだっけ?」
「そうっす。覚えててくれたんすね」
「うん。そりゃもう」
「良かったー」
「どうしたの? 誰かと待ち合わせ?」
「いや、柚月さんに用事なんす」
思いがけない言葉に驚く。
「え? 私に? なんで?」
「いやなんか、ハローさんの様子が変で気になって。このところ腑抜けてるというか」
「腑抜け?」
「ちょっと心配になって。何か知らないすか?」
「そう言われても」

この前のことが原因だとは柚月には思えなかった。
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