ひとりだと思っていた君へ

「ううん。なんかハローくんぽくて」
「でしょ。ハローさんまじ食べ物リスペクトしてますからね。まあ、そんとき初めてハローさんを見たんですけど、喧嘩してるところが強くて美しかったんすよね」
「喧嘩してるところが強くて美しい?」
「うん。そのときは感じました」
「だから、ハローくんに憧れてるんだ」
「だからっていうとよくわかんないっす。ただ惹かれたから、高校入っちゃったって感じっすかね」

ミッチーの言うことはとてもシンプルで、だからこそ本当にハローくんのことを思っているような説得力があった。
憧れも好きも本当はとてもシンプルなもので、感じるから自然と動かしてくれるものなのかもしれない。

駅前に着くと、青色の学ランを着ている生徒が数人目についた。
附学と対立している陽高の生徒だ。
もちろん柚月はそんなことは知らないが、ミッチーは最近陽高の生徒がいきがっているのが気にくわないのもあり、自然とガンを飛ばしてしまう。
柚月が隣にいるとかそういう気は回らないようだ。

それに向こうも気がついたらしく、睨みを返し、こちらに近づいてくる。
柚月も不穏な空気に気がついた。
まさかここで喧嘩なんてしないだろうと思いつつ気が気ではない。

「お前、何ガン飛ばしてんだよ」
目の前まで来ると、お決まりのような科白でミッチーに喧嘩を吹っ掛けてきた。
「ガン飛ばしてわりーかよ」
応戦する。
「ああ?」
柚月はどう立ち振る舞っていいかわからず、その場で立ちすくんでしまった。

すると、その中の一人が急に柚月の顔をじっと見て、
「あ、この女、あれだ。この前、三波といた女」
探し物を見つけたような喜びの声を上げた。
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