ひとりだと思っていた君へ

「渋くんから色々聞いたよ」
「え?」
「なんか拉致られたとか、超怖いよね。なんなのそれって感じだし」
「うん。あのときは、凄いことになったと思ったけど。今は、別に」
「大丈夫? トラウマなってない?」
「うん。大丈夫。なんか面白いこともあったしね」
「柚月、意外にメンタルつよっ」

本当にあのとき、ミッチーが隣にいてくれて良かったのかもしれない。
不良と話したことより、ミッチーとの他愛ないやりとりのほうが鮮明に覚えているくらいだ。
それと同時に思い出してしまうのは、ハローくんに抱き締められたこともそうだが、渋谷たちと一緒に助けに来てくれたことだ。
とても大事にされているような気がした。
だからやっぱり、トラウマになどならないでいられている。

そこで扉がノックされると看護師が顔を出した。
「柚月ちゃん、ごめんね。どういう経緯であったかわかんないんだけど、ナースステーションでこれ預かってたみたいで」
と手に持っていた紙袋を手渡した。

紙袋自体には宛名などなかったので、同封していたカードを確認して誰宛か確認したことを詫びる。
柚月は保奈美さんの店の紙袋だと一目でわかった。
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