ひとりだと思っていた君へ
6

音楽の授業が終わり、湖夏と教室に向かっていると渡り廊下の向こうから、朝芽先輩が柚月達の方へ向かってくるのが見えた。

覚えてなんかいないだろうと思っていたのに、目が合うとニコリと微笑まれ、柚月も遅れて会釈をする。

「朝芽先輩に挨拶されたじゃん」
「私もびっくりした」

ハローくんの好きな人だと知っていなければ、湖夏みたいにはしゃいでいられたかもしれない。柚月の心は複雑だった。
その様子に気が付いて湖夏が「どうしたの?」と問いかける。
ハローくんの好きな人を勝手に話していいのか悩んだけど、自分の中でいっぱいいっぱいで我慢できず、
「……実は、朝芽先輩、ハローくんの好きな人だったんだ」





教室に戻りお弁当を広げながら、この前の出来事を湖夏に話すと
「まじか。朝芽先輩が好きなのか。最強じゃん」
と溜め息を吐いた。
「うん」
「でもさ、もう終わったことなんでしょ。いいじゃん。本人も無理だって思ってるってことは本当にもう可能性はないって言えるくらいの関係ってことだし。よし、気持ちを切り替えて頑張れ」
と湖夏は前向きに捉える。
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