BRST!



「ちょ、里麻ちゃん痛いって!」

「ごめんごめーん。」

「それ、全然悪く思ってないカオだから。」

「あっ、ばれた?」




思い切り攻撃を受けて痛そうに顔を歪めるゆきだけれど、その表情は至極楽しそうで。


分かっているのかいないのか、里麻は悪戯に微笑むばかり。




ゆき、それ、わかるよ。


変わらないように見えても、どこかしら腫れものに触れるような態度になっていく周り。




里麻の答えは、ゆきは勿論私の心にも響いたことは間違いない。




「あはは、里麻なにしてるんですかーもう!」

「うわぁ、暑苦しいからくっつかないで!」

「じゃあ、あたしも。」

「あぁーもう!二人とも暑苦しいってばぁ!」




キッチン中を漂いながら鼻腔をくすぐる、甘い甘い匂い。


ラッピング用のリボン等が散らばるリビングにも、きっと届いている。



嫌がる里麻を間に挟んで笑い合う、ゆきと私。


こんなに幸せなことなんて滅多にない、なんて言ったら昴くんに怒られてしまいそう。


< 693 / 945 >

この作品をシェア

pagetop