たぶんこれを、初恋と呼ぶ


「それと、安尾先輩の指輪は、本物じゃないよ」

「え?」

「結婚してないから、先輩」


彼の言葉に、頭の中のごちゃごちゃがすっと消えた。

昨日の夜兄も、嘘が何とかと言っていたのを思い出した。


「どういう事?何でそんな嘘…」

「職場の先輩に変な入れ知恵されたみたい。安尾先輩て、素直で純粋なところあるじゃん」

「……待って、思考が回らない。でも結局私に嘘をつき続けたって事は、線を引かれてたって事でしょう」

「色々考えちゃったんじゃない?まあ、詳しい理由は本人に聞いてみたら」

「……」

「だから梅、もう我慢する必要ないんだよ。何年もずっと先輩の事想ってたんだから、全部吐き出してみなよ」


通話が切れた後も、私の頭は真っ白だった。

駅までの道をゆっくりと歩きだす。



安尾くんは結婚していない。誰かのものというわけじゃない。

じゃあ、私は遠慮なく彼をご飯に誘ったり、好意を見せていいのだろうか。

再会してからの彼の態度から、好きかどうかは別として、嫌われているわけではないと思える。




7年。

安尾くんと別れて、7年が経った。


忘れた事なんて一度もない。馬鹿みたいにずっと想ってた。





 高校生の頃、年上と付き合うのはステータスみたいな雰囲気が周りの子達の間にあって、私も年上と付き合ってみたいっていうのは少し思っていた。

その中で、周りから見れば確かに私もその流行りに乗っかる様にして年上の人と付き合ったかもしれない。けれど。



でも私は、ちゃんと彼の事が好きだった。







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