契約新婚~強引社長は若奥様を甘やかしすぎる~

それからおよそ二十分後。出かける前から汗だくになりながら、なんとか浴衣の着付けが完了した。

彰さんと一緒に選んだ薄紫の浴衣は、万華鏡のような花柄模様。同系色の帯は、かわいらしい蝶結びにした。

メイクは目元にほんのり赤系のシャドウを入れて、泣きはらした目をカモフラージュ。そして、湯上りのように頬を上気させるチークを入れたり、唇にはぷるんとしたグロスを乗せて、艶っぽさを演出したつもり。

髪型はサイドのおくれ毛を残しつつお団子を作るアレンジで、首筋が見えるようになっている。

……うん。私のなかに眠っていたわずかな色気を、なんとかたたき起こせたって感じかな。

姿見の前で最終チェックをしてから、リビングで待つ彼のもとへ向かう。

「ごめんなさい! 大変お待たせしました~!」

声をかけると、窓辺に佇んでいた彰さんが振り向いた。

ゆっくり歩み寄ってくる彼の浴衣は薄いベージュ系。そして黒系の帯が差し色になって、全体的に涼やかな印象だ。もちろん似合っているのは、言うまでもない。



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