契約新婚~強引社長は若奥様を甘やかしすぎる~

「ひゃぁ!」

びっくりして素っ頓狂な声を出した私に、彰さんが「そんなに驚かなくても」苦笑する。

そして手にスマホを持ちながらベッドに近づいてきた。

「あのさ、今夜倉田がここに来てもいいか? 俺たちのこと祝いたいらしいんだが、結奈はここへきて初日だし、疲れているなら断る」

「倉田さん……というと、銀座本店で親方をつとめる和菓子職人の?」

上半身を起こし、乱れていた髪を手櫛でととのえながら彰さんに尋ねる。

「ああ。あの人には子どものころから世話になってるからな。親戚の子どもが結婚したような感覚で、うれしいんだろう」

子どものころから……。彰さんと倉田さんはただの社長と職人という関係性だと思っていたけれど、そんなに親しい間柄だったんだ。

過去を懐かしむように目を細める彰さんを見ていたら、断るなんてできない。倉田さんとまたお話しできるのは私もうれしいし。

「私は構いませんよ? うちに来るということは、なにかおもてなしのお料理でも作った方がいいんでしょうか」

「できるのか? 料理」

意外そうな視線を向けてくる彰さんに、私は胸を張って答える。

「食べるだけしか能がないと思ったら大間違いですよ。美味しいものは自分でも作れた方が便利だから、料理は得意なんです」

「へえ、楽しみだなそれは。ちなみに俺も料理は好きだから、ふたりで協力して色々作れそうだな。そうと決まれば、買い物行くか」

「はいっ」

やった。彰さんも料理が好きなら、この先すごく充実した食生活が送れそう。この調子で、結婚生活も順調に送れるよね。

私は期待に胸を膨らませ、気分よく彼と買い出しに出かけた。

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