秋に、君に恋をする。
2




 次の日は起きてすぐに、学校に体調が悪いので今日も欠席すると連絡を入れた。

祖母は朝早く起きて畑で作業をするらしい。
それが終わったら朝食の準備をする。

私は台所で、朝食の手伝いをした。
こうやって祖母の隣で料理の手伝いをするのは、小学生の時以来だ。

家では母が料理を作る事はないし、高校に入ってからちゃんとした料理を作った覚えもない。


「おばあちゃん、あとで漬物のつけ方教えて」

「あら。いいよ。それからおやきも作ろうか」

「ニラの薄焼きも作りたい!」

「あれは簡単にできるわよ」

「あっ、明日お弁当作ってこうかな」

「いいじゃない、勇太朗喜ぶね」

「はは、どうだろ。まずいとか言われそう…」

「ばあちゃんも一緒に作るから、そんな事言わせないよ」

「ふふふ」

 
昼前に、祖母と一緒に市場に行った。

今日は私がいるからと、大量に食材を買って二人でゆっくり歩いて帰った。

お昼も二人で作って、NHKを観ながらお昼を食べて、祖母は昼寝をした。

祖母がお昼寝をしている間、私は少し外を歩いた。

祖母の家から10分程歩いたところに神社があって、夏休みにそこで小さなお祭りがある。小学生の頃、勇太朗とよくそのお祭りに行っていたなあ。

神社の階段がちょうど日陰になっていたのでそこに座ると、猫がやってきた。


「わっ可愛い。おいで」

両手を広げたら、その猫はトコトコと私の元にやってきて、隣に座った。
ちょっと太った、茶色い猫。

いいなあ。
猫は勉強しなくていいんだもんなあ。

毎日、こんな気持ちいい風にあたって、こんなにきれいな景色見れるんだもんなあ。


そよ風にあたりながら、ゆっくりと目を閉じる。

あまりにも気持ちよくて、外だという事も忘れて、眠気が襲ってきた。




 夢を見た。


私は小学生で、この田舎にいて、母も父もいて、弟もいて、祖母もいて、みんなニコニコ笑って手を繋いでいた。

あの田んぼに囲まれている道には、所々にコスモスが咲いて、赤とんぼが飛んでいて、その中をみんなでゆっくりと歩いていた。



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