すると君は、また大切なものをひろげるように、ぽつりぽつりと話しはじめた。

「私って酷いの。」

僕は、言われた意味が分からなくて視線だけで君に意味を問いかけた。

「君が、色が見えない事知ってるのに空の色の話をしたの。
たとえ見えなくても、【茜色】が私の色だと知って欲しかった。」

「何でそう思うの。僕は、君の気持ちに共感出来ない。それが、僕の意思と反していても。それは、君だって何となく分かるだろう。」

僕は、不思議でならなかった。ひょっとしたら世界で一番<色>を知らない、無関心な人間は僕だと思っていたから。

「君は、色が見える者同士、音が聞こえる者同士だとして、全ての気持ちや感じた事を共感する事は出来ると思う?」

いつになく真剣な君の視線が僕を射抜いた。

「それは…無理だと思う。同じ人種だとしても、もとは別の人間だからね。」



「だからなの。」


君は…静かに、だけどはっきりと、確かな口調でそう言った。
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