恋愛イデアル。
慈悲。
本棚。

リンネは自室の本棚を見た。
木製のありふれた本棚だ。

そこにアクリルスタンドで綺羅水晶めいた繊細な絵画が飾られる。
自室には植物があった。生き物。

太古のゴンドネシア大陸の繁茂した植物の子孫だ。

ひとも子孫を作るもので、それは永遠の輪廻であった。
永久だ。

リンネが思い出したのは旧家の土蔵で飼い猫を看取ったこと。その最後の瞬間に平らかにさせようと死の予感に苦しむ飼い猫を手で撫でたこと。声をかけたこと。それを誰にも話さず、たとえば家族はそのとても可愛らしい猫が独りきりで亡くなった、とそう思っていたこと。

リンネが慈悲に目覚めたのはそのときだったのかもしれない。生き物は生きている。一生懸命に。
だから慈悲こそがリンネには重要に思え、さまざまな介入を繰り返したものだった。たとえ自分が損をしても、だ。
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