ずっと恋していたいから、幼なじみのままでいて。
祈りの果ての奇跡を望んで
「お母さん、じゃあ行ってくるね」


あたしは充電し終えたスマホをバッグに入れながら、リビングをヒョイと覗いた。


壁際に面した大窓から差し込む光は、すっかり夏模様。


うっとうしかった梅雨が明けたとたん、『待ってました』とばかりに、太陽が張り切りだした。


部屋全体が強い日差しを受けて、普段よりもずっと明るく見える。


アイスコーヒーを飲みながらソファーに座って読書をしていたお母さんが、本から顔を上げた。


「晩御飯の時間までには帰ってきなさいよ」


「ん、大丈夫。そんな遅くなんないから」


答えながら前髪を気にして、指先でチョイチョイ触っているあたしを、お母さんがからかう。


「いいわねえ、若者は。夏休みだからって平日の昼間からデートですか」


はい、その通り。今日は雄太とデートです。


ひと月前、あたしの両親が離婚した日に雄太と恋人同士になってから、あたしたちの交際はとても順調だ。


あれから雄太は、毎朝登校前に家まで迎えに来てくれるし、夏休みに入ってからも連絡を絶対に欠かさない。


もともと周りに気を配るタイプだったけど、話を聞いた海莉がうらやましがるほどマメなんだ。
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