君の言葉は私を刺す
私がそう言うと、來斗はあーーーっと言って早輝を呼んだ。




話を聞いた早輝も來斗と同じような反応をした。




「そっか。言ってなかったんだけど、波人に家族の話は厳禁なんだ。」




え?




「理由は言えないんだけど、波人に家族とかそういう話はしないであげて。」




お願いっていう早輝の顔も、なんだか悲しそうな來斗の顔も、今まで見た事なくて、本当にダメなことしたんだと感じた。





なんでもないこと。




大したことないこと。




そう思うのに、あの時の波人の顔が忘れられなくて。




私は残りの日、海に行くこともなかった。




おばあちゃん家を出る時、また来なさいっておばあちゃんが言ったこと以外、あまりその後のことは覚えていない。



お母さんのいる家に帰って、明後日から学校が始まるまで、私はずっと、波人の後ろ姿を思い浮かべていた。




長いようで短い夏休み。




連絡を取ることもなくなった3人のID。





そして、吸い込まれそうな黒い瞳。




何度も思い返す、黒髪に表情。




それをたまに思い返して、ドキドキするくらいで。




またいつもの日常が戻ってくる。




頭の中であの後ろ姿を何度も追いかけて。




私の特別な夏が終わった。



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