羊かぶり☆ベイベー
吾妻さんは、本当に凄い人。
私の中では、そうなっている。
今日、初めて見知ったことを分かり切ったように、言わないで。
先程「慣れるまでに時間がかかる」と、私のことを言ったのだってそうだ。
だけど、今は、私のことなんかよりも。
私よりも、吾妻さんを悪く言われるのは、とても嫌だ。
悔しい。
自分のことよりも、もっと何倍も悔しい。
この感情を必死に押し込めていると、とうとう私に話が振られる。
突然で、少し動揺してしまった。
「みさおちゃんも悩んで、救いを求めて行ったのに『信じられる』だけじゃ、意味なんて……」
それを聞いて、私の胸の辺りが疼く。
私は──。
今日までの、カウンセリング風景を思い起こす。
吾妻さんから受けた、温かくて丁寧な数々のサポート。
全部、一つ一つを覚えている。
その一つ一つが、私を──。
「その方法で私は吾妻さんに、救ってもらったの……。これでもか、って程。何度も何度も」
「みさおさん……」
吾妻さんの小さく漏れた声が、耳に届く。
吾妻さんには、本当のことだから、何度も伝えているのに、それでも未だにこれだけは謙遜されてしまう。
今の呟きだって、口調から伝わってくる。
こんなにも、感謝しているのに。
「私も知らなかった自分の可能性を引き出して、その可能性を信じてくれた。それが私を支えてくれて、何度も……背中を押してくれた」
私が真っ直ぐユウくんを見据えているからか、彼もこちらを視線を外さずに居る。
安堵した。
つい力んでしまった後だからか、目の奥が熱くなる。
それ程までに、真剣に訴えたいことだった。
だから、ちゃんと聞いてもらえただけで、本当に良かった。
「だから、意味なんて……十分過ぎる程にあったんだよ」