羊かぶり☆ベイベー
「私は、本当のことしか、言わないよ」
そう言う口が縺れそうになる。
散々、私もユウくんに誤魔化しの嘘を重ねてきた。
でも、今日こそは、本心を彼の前に散らかしてでも、伝えたいと思う。
「ユウくんのことでは、なくて。言い方が難しいんだけど、私のことを聞いてもらっていて」
「じゃあ、そこに何で俺の話が出てくるの」
「……ユウくんと居るとき、どんな風に居たら良いか分からなくて。ずっと接し方に戸惑っていたから。最初は、素直になれない、私側の問題だと思って話を聞いてもらってたの。だけど──」
「なんで、そんなに難しく考えるの?」
言葉を遮られた。
鋭い刃物の様だ。
人同士、心あるもの同士だからこそ、大切に考えてきたのに。
それなら、貴方はずっと軽く考えてきたの?
私が困っている間にも。
可笑しいな、泣きたい気分だ。
「……ユウくんが、私のことをどう思っているのかが、分からなかったから、だよ」
「俺?」
「だって、私は今まで一度も『好き』とか……『ごめん』も言われたこと無いんだよ」
階段の踊り場でのこと、未だに謝罪も弁明すらも無い。
彼自身は、それに気付いていないのだろうけれど。
それでも、今、全て言葉に出来た。
羊の皮の下で言わずに、温めて置いておいたことを。
すると、ユウくんは首を傾ける。
「俺のせいにしないでよ」
確かに、彼はそう言い放った。
信じられなかった。
あまりにも無責任な台詞に、言葉を失ってしまっう。
そのとき、吾妻さんの眉が、ぴくりと動いたのを見た。
「聞き捨てならないな」
唸り声の様な低音なのに、しっかり聞き取れた吾妻さんの声。
ユウくんも直ぐ様、反応し、吾妻さんに突っ掛かっていく。
「何が? あんた、言ってしまえば、赤の他人ですよね。こんなときだけ、口挟まないでもらえますか?」