羊かぶり☆ベイベー
「私、あの子のようにはなりたくない、です……」
「おお。言うときは言うね、みさおさん」
「あ、私は、そういうつもりじゃなくて……」
決して、嫌味のつもりで言ったのではなくて。
あの女の子が、ユウくんと口論した後、後ろから抱き締めた光景が頭に過る。
その後、振り向いた女の子の鋭い眼光も。
思い出すと、背筋が未だにゾッとする。
「実は浮気相手だったかもしれない子から、宣戦布告されて……」
「いつの間にか、そんな激しいことに巻き込まれてたの?!」
「間接的にですが」
大袈裟に驚く吾妻さんに、苦笑いする。
「私は、あの子がしてきたように、別に攻撃的になりたいわけじゃない。身を引くときは引きますし」
吾妻さんは私をじっと見て、視線を逸らさない。
むしろ、その表情は不安気だ。
「私が素直になりたい、自分を変えたいと思うのは、誰かを傷付けるためじゃありません。今の気持ちをちゃんと伝えられて、相手を変に苦しませないようにするためです」