玻璃の向こう
第三章/それは欠片だけれど


七村圭介は、迷いの中にあった。

不採用。天職と信じる仕事に降りかかり、自分を苛む三文字。

学生時代から頭角を現し、大学院時代にはヨーロッパに留学し、建築やインテリアの造詣を深めた。鳴り物入りで四商デザインテックに入社して二年目。
入社早々手がけたマンションのブランディングで評価を得て、思い描いていた通りの滑り出しを切った。

だが、この半年ほど、圭介は苦戦していた。最初の評価はビギナーズラックだったのかと思ってしまうほど、何度デザインを提案しても採用されない状況が続いている。

いちばん心を削られるのは、理由が分からないことだった。精神面のスランプではないはずだ。
誰よりも美しく、誰よりも完璧なデザインを提案している自信があった。

それなのに選ばれない。
なぜだ———?
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