もう一度〜あなたしか見えない〜
実は、この頃、夫との時間がドンドンなくなってしまっていた。不仲になったわけじゃない、とにかく夫の仕事が忙しくて、夕食を共にするのも、ままならなくなり、頼みの週末も、疲れ果てた夫がなかなか起きて来ないという日が多くなった。


このままではいけない、私も夫もそう思っていたが、現実に夫の生活を間近に見ていると我が儘は言えなかった。だけど・・・。


「それに、僕の方も、なんか気になる人が出来ちまって・・・仕方なかったのかもしれません。」


その言葉に、私はドキリとして、思わず彼の顔を見つめてしまった。そして帰り道、私は告白された。


「先輩が好きなんです。」


私は首を横に振った。


「ゴメン。私には夫がいる、君の気持ちは受け入れられないよ。」


「そうですよね、すみませんでした。」


気まずい雰囲気のまま、その日は別れた。


だけど、その言葉は私の本心だったんだろうか?だって、それ以降も私は彼を突き放すことをせず、定期的に飲みに行くことを止めようとはしなかった。正直、寂しかった。彼と会うことで、その寂しさを埋めようとしていたんだと思う。


そして何回か飲み会を重ねたあと、ついに私は彼の腕の中に閉じ込められ、唇を重ね合った。そして、そのまま彼と、結ばれてしまったのだ。
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