代行秘書 ときどき レンタル彼女⁉



処置中待ってる間も心細くて張り裂けそうだった。
何で気付かなかったんだ俺は。
ぶっ倒れるまで身をすり減らしていたなんて……気付かなかった俺は上司失格だ。



検査の結果、ただの過労で他の病気である疑いはないとの事だった。
点滴を打ってじきに目覚めるだろうと言われ心底ホッとしてすぐさま手を握る。



恥ずかしいけど…ちょっと泣いた。
安心したら溢れ出てた。



「何泣いてんだよ、ダセぇ」



あ、忘れてた。
圭介も居たんだった。
うるせぇよ。



「働かせ過ぎだバカ」



ごもっとも。
言い返す余地もねぇ。



「いくら好きで一緒に居たいからって拘束し過ぎたんじゃねぇの?本気で好きならもっと守ってやれ」



その通りだ………情けねぇ………
俺何やってんだ?
一番近くで見てて何で気付かなかったんだよ……
急に遠くに感じて握る手が震える。



青白い顔から少し肌の色が戻ってきた気がした。
コンコンとドアがノックされ入って来た一人の女性。
脱いだスプリングコートを手に持ち、スーツで現れたこの女性は俺が連絡し呼び寄せた人。



「紗和…」と真っ先にベットに駆け寄る。
過労だと説明する前に彼女は俺に頭を下げてきた。



「申し訳ありません…!日頃の健康管理を怠った結果です。第一秘書としてあるまじき行為でした。すぐに他の者を手配致します」



「あ…いや、それはいいです。彼女じゃないと困るので」


「紗和より…ハイスペックな人材を取り揃えておりますが?」






< 143 / 278 >

この作品をシェア

pagetop